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FileMakerとの出会い


プロとしてはじめての失敗プロジェクト

私がまだサラリーマンをしていた数年前の話です。

新規開発プロジェクトをハンドルできる唯一の社内SEとして、数億円規模の基幹系システム開発プロジェクトのプロジェクトマネージャとして従事していたときのこと、社内でもうひとつの新規システム開発プロジェクトが立ち上がりました。

規模的には5000万円以下の中規模レベルの新規開発プロジェクトでした。

先にも書いたとおり、その当時は唯一開発プロジェクトをマネジメントできるスキルを持った社内SEであったため、二つのプロジェクトを掛け持ちすることになりました。

過去にも複数プロジェクトの掛け持ちは経験しており、そのこと自体は取り立てて不安もなかったのですが、この甘い考えが泥沼の状況を招くことになりました。

最初に手がけていた大規模プロジェクトは、半年間に渡って自分自身が業務分析を行い、新システムの基本デザインをしてRFPを発行し、厳正な審査を経て決定したパートナーとの開発なので、システムテストフェーズまでは極めて順調に進みました。

ちょうどこのプロジェクトが順調に進んでいたこともあり、2本目のプロジェクトも安心してキックオフしました。

しかし、1本目に立ち上げたプロジェクトに少しづつではありますが進捗の遅れが出てきます。

原因は、設計フェーズでエンドユーザが承認した機能が、システムテスト段階でレビューをすると「思っていたものと違う」とういケースが多数でてきたからです。

この遅延に輪をかけて、2本目のプロジェクトは立ち上がりから怪しい雲行きを見せていました。

大規模なプロジェクトを抱えながら、もう一本のプロジェクトも同じレベルでたずさわることは困難だと判断し、2本目のプロジェクトに関しては開発規模がさほど大きくないことから、プロトタイピングモデルでの開発を指示し、プロトタイプのレビューはもっぱらエンドユーザに任せて、自らは1本目のプロジェクトの火消しに奔走していました。

1本目のプロジェクトの火消しが何とか完了したころ、2本目のプロジェクトは既に手のつけられない状態になっていました。

いくらプロトタイプを提示しても、エンドユーザ側がOKを出さない状況だったのです。

プロトタイピング手法で一番怖いのは、予想した期間中にプロトタイプシステムが「合格」しないこと、そしてプロトタイプシステムそのものが複雑化してしまい、プロトタイプシステムの開発パフォーマンスが落ちてしまうことです。

2本目のプロジェクトは見事にこの状況に陥っていたのです。

私もできる範囲であらゆる手は尽くしたのですが、もはやベンダーとエンドユーザとの間には信頼関係そのものがなくなっており、プロジェクトもさることながらそれ以前のレベルで修復不可能なレベルになっていました。

ベンダー側からは程なく「ギブアップ」の声が上がり、当初の予算の1.5倍の開発コストをかけて、予定していた機能の半分程度しかリリースすることができませんでした。

これは偏に、十分な業務分析やプロジェクトの難易度を評価することなく、安易に2本目のプロジェクトを立ち上げてしまった自分に責任があることは火を見るよりも明らかでした。

私個人が初めて味わった「失敗プロジェクト」でした。

エンドユーザの開発したFileMakerソリューションが危機を救った。


そんな泥沼プロジェクトにおいて、開発することのできなかった残りの機能をエンドユーザの責任者がFileMakerのVer8.5を使って開発し始めました。

この方は、FileMakerのVer5から自前で様々なシステムを開発しており、実はこの2本目のプロジェクトに関しては、FileMakerVer5.0で開発されたシステムのバージョンアップを図って立ち上がったプロジェクトでした。

私は内心、「プロが手がけても失敗したのに、素人さんにできるわけがない。」と思っていました。

また、私はその当時、FileMakerはエンドユーザ向けにつくられた「おもちゃ」のようなデータベースソフトだと思っていたので、出来上がってきても実業務に使えるようなレベルのものでは絶対にないと思っていました。

しかし、実際にふたを開けてみると、さすがに洗練されたシステムではないものの、極めて現場の業務にマッチした機能が実装されたシステムが出来上がってきたのです。

高い費用を請求するプロが数ヶ月かかっても開発できなかったアプリケーションを、エンドユーザはその半分以下の時間で創り上げてしまったのです。

そして私はせめてもの罪滅ぼしとして、エンドユーザでは開発難易度が高い複雑な条件が絡み合うプログラミング(スクリプティング)の部分と、会計システムに直結する一部の機能において開発のサポートをさせていただきました。

結果、大きな混乱もなくシステムのカットオーバーを向かえる事ができました。

確かに無事システムがリリースできたのは良いことなのですが、個人的にはなんとも複雑な気持ちでカットオーバーのサポートにたずさわったことを覚えています。

FileMakerの実力を認め、そのスキル習得へ

私はこのエンドユーザが開発したFileMakerのソリューションが大きな混乱もなくカットオーバーできたことで、FileMakerの実力を認めざるを得ませんでした。

当初は、自分のプロとしてのプライドがズタズタに打ち砕かれ、悔しくてしょうがなかったのですが、エンドユーザが使ってもあれだけのレベルのものができるのであれば、プロの人間が使ったらもっとすごいことができるのではないだろうか・・・

そう思ったのです。

この気付きを得て、私は通常業務の合間やフリーランサーとして独立する準備の合間を縫って、少しずつFileMakerテクノロジーの勉強をしました。

実際にFileMakerの勉強を始めてみると、他のポピュラーな開発プラットフォーム、例えばdotNETやLAMP、JAVA等と比べて、「FileMakerを使った開発者向けの情報」が極めて少ないことに気がつきました。

カリキュラム化された開発者養成コースなども、その当時は見つけることができず、本格的な開発力を身につけるためにはどこから知識を得ればいいのか、行き詰ってしまったのです。

そんな中で活路が見出したのが、海外のWebサイトでした。

日本語での開発技術者向け文献はほとんど見つけることができなかったのですが、海外のサイトには、FileMakerに特化したWebスクールやWebセミナー、オンラインマガジンなど「まさにこういった情報がほしかった」という情報がたくさんあふれていたのです。

私の英語力たるや本当に取るに足らないレベルなのですが、そういった海外のサイトから少しずつ現場の開発で役立つ開発ノウハウを習得していきました。

この海外からの情報ソースで何よりも役に立ったのが、今でも定期購読しているFileMaker Magazine、そしてFileMaker Advaisorというサイトの情報です。

FileMaker Magazine :
FileMaker Advisor :

この2つのサイトには、開発者として必須とも言うべき知識がぎっしりと詰まっていました。

そして豊富なサンプルシステムもこれらのサイト、もしくはこのサイトからリンクされている先のサイトから入手することができました。

これらのサンプルシステムをひとつひとつ解析してゆくことで、FileMakerのエキスパート技術者がどういったシステム設計を行い、どういったプログラムを書いているのかを研究することができました。

今の私のFileMakerの開発ノウハウの80%以上はこういった海外の情報ソースや、FileMakerのエキスパート開発者が作成したサンプルプログラムの解析結果から得たものになります。

こうしていろいろな回り道や試行錯誤を繰り返しながら、ようやくプロとしてFileMakerを使ったシステムをエンドユーザに提供できるレベルになったと自覚できたのは、あの失敗プロジェクトを経験してからすでに2年近くの月日が経過していました・・・